孫と養子縁組をした際に起こりやすい相続トラブル

 自身の孫に当たる血縁者と養子縁組を行うことは、もちろん可能です。
 このような場合は、「孫に遺産をあげたい、相続権を与えたい」という目的が多いようです。
 孫の立場のままでは、代襲相続が発生しない限り相続権を得られませんが、養子の立場になれば、実子と対等な相続権を得ることが出来ます。

代襲相続とは
本来遺産を相続するはずの法定相続人が死亡等の理由で相続出来ない場合に、その人の子供が代わりに遺産相続する制度のことです。
具体的には以下のような場合に発生します。

  1. 被相続人よりも先に法定相続人が死亡した場合
  2. 法定相続人が「相続欠格」に該当した場合
  3. 法定相続人が「相続廃除」に該当した場合

代襲相続人になれるのは「直系卑属の孫やひ孫」と「傍系卑属の甥・姪」のみで、代襲相続人の相続分は、もともと相続人だった「被代襲者」の相続分と同じです。
ただし、代襲相続人が複数いる場合には、被代襲者の相続分を人数割りで承継することになります。
また、代襲相続人以外の法定相続人の相続分に対して、代襲相続の発生が影響を与えることはありません。

 ただし、孫と養子縁組を行う場合には、相続税が高額になるケースがあることに注意が必要です。
 被相続人の孫が養子として相続する場合、孫に課される相続税額は2割加算されます。 <参考:相続税額の2割加算|国税庁

 その為、想定していたよりも相続税額が高額となり、納税資金が用意出来ないという事態になることも良くあるようです。
 孫を養子として相続権を与える場合には、被相続人が生前の段階から、相続税額の具体的なシミュレーションを行っておく方が良いでしょう。

子供の結婚相手と養子縁組をした場合に起こりやすい相続トラブル

 家や事業を継がせるなどの目的で、子供の結婚相手(嫁・婿)と養子縁組をするケースもあります。
 ただし、子供の結婚相手と養子縁組をした後、仮に子供が離婚した場合、元結婚相手との養子縁組に基づく相続権は残ってしまうことに注意が必要です。

 養子縁組を解消したい場合には、離縁の手続きが必要です。(民法811条以下)
 養子側が離縁を拒否するケースにおいては、裁判に発展してしまうというリスクもあることを認識した上で、養子縁組の是非を検討すべきかもしれません。

結婚相手の連れ子と養子縁組をした場合に起こりやすい相続トラブル

 結婚相手に連れ子がいた場合など、連れ子との絆を深める、或いは法律上の扶養関係を発生させるといった目的で、パートナーの連れ子と養子縁組をするというケースがあります。

 この場合、仮に離婚することになった場合、養子縁組を解消するには離縁の手続きが必要となる点においては、前述の通りです。(民法811条以下)
 元配偶者や連れ子との関係性が悪化している場合には、離縁に関する手続きが紛糾する可能性もあることを踏まえて、本当に養子縁組をすべきかどうか慎重にご検討頂くのが良いかもしれません。

同性パートナーと養子縁組をした場合に起こりやすい相続トラブル

 我が国の法律上、現在では同性婚は認められていない為、結婚により同性パートナーに相続権を与えることは出来ません。
 その代わりに、同性パートナーと養子縁組をすることで、養子としての立場での相続権を与えようとするケースがあります。

 LGBTに対する理解は、社会一般にかなり浸透してきているものの、理解についてはまだまだ個人差があるのが現状です。
 遺産分割協議の場において、LGBTに対する理解の低さなどが原因で無益な争いを生じさせないように、同性パートナーとの養子縁組については、特に他の相続人がいる場合では、それらの人々に良く説明しておくことが必要かもしれません。

 なお、仮に将来、法改正が行われ、同性婚が認められた場合でも、養子縁組をしたままでは親子関係にある為、そのままでは結婚出来ないことに留意が必要だと思われます。(民法734条1項)

節税目的で養子縁組をした場合に起こりやすい相続トラブル

 相続税には、以下の基礎控除額が設けられており、基礎控除額に達するまでの相続財産については、相続税が課されません。

 基礎控除額 = 3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

 この仕組みを利用して、養子縁組によって法定相続人の数を増やし、基礎控除額を増額しようとするケースも存在します。
 ただし、基礎控除額の計算上、法定相続人の数にカウント出来る養子の人数には、以下の通り上限が存在しますので注意が必要です。

  • 実子がいる場合法定
    相続人の数にカウント出来る養子は1人まで
  • 実子がいない場合
    法定相続人の数にカウント出来る養子は2人まで

 つまり、むやみに複数の養子縁組を行っても、相続税を減額する効果はないということに留意しましょう。

 また、相続税対策のみを目的として養子縁組を行い、親子関係を形成する意思が全くないと認められる場合には、過去の判例によると養子縁組が無効となる可能性がある点にも注意が必要です。

 相続対策を目的として養子縁組をする場合、実子をはじめとした他の相続人との事前調整を十分に行い、相続トラブルを回避することが重要になります。

養子縁組は慎重に

 全てのパターンにおいて共通するのは、安易な養子縁組は深刻なトラブルに繋がりかねないので、慎重な対応を期すためにも、事前に専門家へご相談頂くのが最善ということです。

 当事業所でも、この業務を行なっております。ご心配の方は、当社にご相談ください。

イラスト素材:相続イラスト.com